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平成15年12月17日(水) 八ツ場ダムを考える

◇「八ツ場ダム」とは...。
八ツ場ダムは、群馬県長野原町に建設を予定されている重力式のコンクリートダムで、ダムの高さは131mで、利根川水系では、4番目の高さのダムとなります。また、総貯水容量は1億750万立方メートルで利根川水系では3番目に大きいダムです。

◇「八ツ場ダム」は何故造られるのか...。
昭和22年(1947年)のカスリーン台風は、大雨により戦後最大の被害をもたらし、その被害は死者約1,100名、被害総額は現在の金額に換算し約15兆円と言われる水害をもたらしました。八ツ場ダムは、洪水期(7月1日~10月5日)に6,500万立方メートルの洪水を調節することが可能となる計画で、吾妻川や利根川の沿岸はもちろん、利根川下流に位置する茨城県・埼玉県・東京都など、流域全体に大きな洪水被害が及ぶのを未然に防ぐ「治水」機能があります。
また、利根川水系では、2~3年に1回のペースで、渇水が発生しています。一方、利根川水系に依存している首都圏の水需要は、昭和45年度(1967年度)と比べて3倍に増えています。八ツ場ダムの完成により、首都圏の都市用水として、最大22,123立方メートル/秒の供給が可能になります。東京都、埼玉県、群馬県、千葉県、茨城県の首都圏に、工業用水としては、群馬県、千葉県の広い範囲に水を送ることが計画されています。
◇今何故「八ツ場ダム」なのか...。

「八ツ場ダム」の総事業費について、国から、水没関係者の生活再建に関わる費用の増加、当初見積もり段階からの物価、消費税などの社会的要因があり、基本計画策定時の昭和61年(1986年)の2,110億円から4,600億円へと増加し、それに伴って東京都の負担金も343億円増加されると示されたことを受け、今議会(2003年第4回定例会)に国交大臣からの意見照会に応じ事業変更承認したい旨の知事提案が出されているのです。
◇「都議会民主党」では...。
都議会民主党では、民主党として「無駄な公共事業はただちに中止する」との政策があることもあり、俄かに賛成することはでせきないとの立場から、この問題を所管する「くらし部会」主催で、2003年12月5日から6日の日程で緊急に現地視察を行いました。

◇視察の状況は...。
国土交通省関東地方整備局八ツ場ダム工事事務所の協力で、JR吾妻線、国道145号線、県道林吾妻線の大規模トンネル工事を伴う付け替え工事が急ピッチで行われている状況や水没関係5地区連合補償交渉の結果として進められている代替地造成工事、既に完成している長野原町立第一小学校をつぶさに視察しました。しかし、八ツ場ダム堤体工事は、水没する住民の生活再建の場としての代替地確保工事が終了する平成19年(2017年)まで着工しないとの方針で着手されてはいませんでした。また、「八ツ場ダム」について真摯に検討を進めている「八ツ場ダムを考える会」の方々からのお話しも伺いました。
国道145号線付け替えに伴う工事
代替地造成工事
長野原町立第一小学校
ダム堤体予定地

◇「八ツ場ダム」建設に根強い疑問の声...。

昭和42年(1967年)11月の「実施計画調査を開始」以来、八ツ場ダム建設には、強い反対運動の歴史がありますが、平成11年(1999年)6月の「八ツ場ダム水没関係5地区連合補償交渉委員会が設置」されて以降は、現地での大きな反対運動はなくなっています。しかし、ダム建設に対して問題を指摘する声には、根強いものがあります。


「八ツ場ダム」建設で指摘される問題点
▼洪水調節について見ても、机上の計算で示される効果には甚だ疑問がある。八ツ場ダム事業主体である国土交通省は「200年に一度の大洪水に対応」としている一方で、「ダムの寿命は100年」とも言っている。これでは、「大洪水の時にダムの寿命がない」ということもある。

▼都市用水についても、首都圏の人口はごく近い将来にピークを迎える一方で、水需要は減っている。こうした中で、八ツ場ダムを建設する必要性はないのではないのか。

▼草津温泉を有する草津白根山から流れ出る吾妻川は非常に強い酸性の水で、その水を中和するために一日60トンもの石灰を投入している。この中和費用は年間約10億円となっている。しかし、それでも完全に中和されるわけではなく、川を見れば分かるように、石は茶褐色に染まっている。そんな川をせきとめてダムをつくっても飲料水などには利用できない。

▼ダム建設予定地の土地は、火山の噴火の影響を受け地質が極めて脆弱である。貯水開始後に、奈良県の大滝ダムのように周りからの地滑りなどを誘発する恐れが強い。

◇「都議会民主党」の対応は...。

(1)第4回定例会《代表質問》
2003年12月9日の東京都議会第4回定例会「代表質問」で、石原知事及び都市計画局長に質しました。その結果、八ツ場ダムについては、その必要性があり、費用負担の増加も止むを得ないとするものの、都が同時に進める「戸倉ダム」からの撤退を求めたことに対しては、明確に事業からの撤退を知事が表明しました。

戸倉ダムから撤退
▽(百二十三番青木英二)東京都は、八ツ場ダムの必要性を水源確保に求めていますが、現時点でさえ、水需要の予測と実績とに大きな乖離があるなかで、八ツ場ダムが完成するであろう頃には、今後の人口の減少、あるいは、地下水など他の水源の利用転換などにより、需要に十分対応できるとの指摘もあります。しかも、本来であれば、すでに明かなっていい第五次フルプランにおける水需要予測が、未だに公表されないというのであっては、その必要性を水源確保に求めるのは、根拠がいささか薄弱です。
社会経済状況が変化するなかで、また、いまだ新たな水需要予測が公表されないなかで、八ツ場ダムの必要性について、どのように認識しているのか、見解を伺います。
【知事石原慎太郎】八ツ場ダムの必要性についてですが、水は政(まつりごと)の根幹であり、水を治め、水を安定的に供給することは、国や自治体の重要な責務であります。都は、水源の大半を他県に依存しており、これまでも、水源地の理解と協力を得ながら、必要なダムの水源開発に参画してまいりました。当然のことながら、参画に当たっては、将来の水道需要を適宜見直し、水源開発との整合を図ってきたところです。八ツ場ダムについては、将来の水道需要の見直しを織り込んでもなお、渇水に対する安全性を確保する上で、不可欠なものと判断しております。
 
▽(百二十三番青木英二)八ツ場ダムに関する今回の知事の提案は、現行計画で2,110億円の事業費を4,600億円に変更するというものです。
八ツ場ダムの事業費は、かねてより2,110億円では済まないと言われていましたが、これが改めて4,600億円にふくれあがると聞いて、国の事業費算定に、怒りを禁じ得ません。
この国のやり方を見れば、4,600億円の事業費が、今後、さらに増えることさえ予想され、これが水道料金の値上げにつながれば、都民の理解は到底得られません。
東京都は、現地に職員を派遣するなど事業費を検証したとしていますが、2倍以上にふくれあがった事業費に本当に納得し、請求通り負担するつもりなのか、改めて見解を伺います。
 
【都市計画局長勝田三良】八ツ場ダムの事業費増加についてでありますが、八ツ場ダムは、昭和27年(1952年)の構想発表以来、長年にわたり、賛否をめぐる議論がありました。この間、事業者である国と地元との間に、群馬県が仲介に入ることで、生活再建についての覚書が締結され、ようやく、昭和61年(1986年)に、現在の基本計画が策定されたところであります。それにより、測量等の現地調査が、はじめて可能となり、付け替え道路等の詳細な検討に入るとともに、生活再建についても、本格的な調整が進み、平成13年(2001年)に補償基準の妥結に至ったのが、増額の一つの要因でとなっています。 加えて、その間、十五年以上が経過しており、物価上昇や消費税導入などの社会経済的要因もあり、事業費の大幅な増加となったものです。
 
▽(百二十三番青木英二)八ツ場ダムでは、すでに、国道や県道、JR吾妻線の付け替え工事、代替地の造成などで1,500億円が費やされていますが、事業が進んでいるということで、事業を正当化するという立場には立ちません。現在時点で撤退した場合、メリット・デメリットについて伺います。
 
【都市計画局長勝田三良】八ツ場ダムから撤退するとした場合のメリット、デメリットについてでありますが、八ツ場ダムは、将来にわたり、渇水に対する安全性を確保する上で不可欠なダムであり、撤退するメリットを挙げることは困難です。
他方、仮に撤退した場合には、将来の給水の安定性の確保に大きなリスクを生むことになります。加えて、長年にわたる賛否をめぐる議論を経て、生活再建の途を定めた多くの地元住民の生活設計に、大きな混乱を来たすほか、水源の大半を他県に依存する都として、水源地との関係に多大な影響を被ることが考えられます。
 
▽(百二十三番青木英二)国土交通大臣からの意見照会に応じて、八ツ場ダムの事業費変更を、議会に提案しているのは、関係する一都五県のうち、東京都と栃木県だけで、他の自治体は提案を見送っています。
事業費変更に伴う予算の支出は平成17年度(2005年度)からであり、ましてや八ツ場ダムの必要性の根幹をなす水需要予測がもうじき公表されるであろうことなどから、東京都が、何故、他の自治体に先駆けて、国の事業費増という要求に応じようとするのか理解できません。
八ツ場ダムに関する国への回答については、水需要予測など十分な議論ができる材料が揃った時点まで待つこともひとつの選択肢であると考えますが、見解を伺います。
 
【都市計画局長勝田三良】議会への付議の時期についてでありますが、水需給の現状と見通しや、水源確保の状況には、八ツ場ダム関係都県の間でも差があり、対応の違いとなって現れていると考えております。しかしながら、八ツ場ダムの必要性については、関係都県が共通して認めているところであります。
都といたしましては、将来の水需給について見直すとともに、改定された事業費についても、可能な限り検証を加え、国に対して、徹底したコスト縮減への取り組みを求めているところです。その結果、今議会に付議することが適当であると判断したものであります。
 
▽(百二十三番青木英二)平成の時代に入ってから平成12年度(2000年度)末までに、全国において大小六十四のダム事業が中止になるなかで、今回提案されている八ツ場ダムだけでなく、東京都が参画する水資源全体について、この際、徹底的に見直していくべきと考えます。
東京都が参画しているダム事業は現在、八ツ場ダムのほかにも、埼玉県の滝沢ダム、群馬県の戸倉ダムがありますが、なかでも、戸倉ダムについては、本格的な工事に至っていないばかりか、自然環境に与える影響が著しく大きいものと考えています。
戸倉ダムの事業予定地は、尾瀬の登山口の一つである大清水の間近にあり、また、その一部が日光国立公園内に位置するとともに、希少猛禽類を頂点とした豊かな生態系が保たれています。さらに、この地域を流れる片品川上流は、ミズバショウやニッコウキスゲの美しい尾瀬を控えているのです。
こうした自然に囲まれる貴重な地域に、高さ158メートルという日本で三番目に高いコンクリートダムを作ることこそムダな公共事業であると考えます。
戸倉ダムについては、撤退を求めます。
 
【知事石原慎太郎】戸倉ダムについてでありますが、都としては、建設中の滝沢ダム、八ツ場ダムの完成により、将来の安定的な給水の確保に一定の見通しが得られると考えています。現在、都は将来の水需要の見直しを進めており、また、渇水に対する安全性等を総合的に検討しております。その結果、本格的な工事には未着手の戸倉ダムについては、参画を見直し、事業から撤退する方針です。
 


(2)都市・環境委員会
12月11日に開催された都市・環境委員会では、第二百四十四号議案「八ツ場ダムの建設に関する意見について」の委員会審査が行われました。多くの委員からは、今回国から示された額の妥当性に疑問がある。審査の前提条件として各会派から必要だとして早急に示すようにと迫っていた水需要予測が知事の代表質問答弁で示されたとは言え、その内容自体の精査ができないなど多くの問題点が指摘されました。しかし、東京都側からは、東京都としても国の試算について現地に職員を派遣し精査した。八ツ場ダムは治水・利水面からどうしても必要性なダムであるとの答弁が繰り返されました。
12月12日には、委員会としての賛否が問われ、都議会民主党は、継続審査の動議を提出しましたが、少数否決。自民党・公明党の賛成多数で可決されました。

都市・環境委員会 意見・動議
都議会民主党 坂口こうじ(西東京市)

私は、都議会民主党を代表して、第二百四十四号議案「八ツ場ダムの建設に関する基本計画の変更に関する意見について」意見を申し上げるとともに、本件は継続審査にされたい旨の動議を提出したいと思いますので、よろしくお願いいたします。
私たち都議会民主党は、この問題を審議するに際して、都議7名によって現地に赴き、国土交通省の所長の案内で、工事の進捗状況などをつぶさに視察するとともに「、八ツ場ダムを考える会」の人たちからも意見を聞くなど、この案件の対応について、慎重に検討してきました。
本日、都市・環境委員会での採決日を迎えるにあたり、私たちが、この案件について、なお、継続して審査すべきとの結論に至ったのは、次の理由によるものです。
一つに、ダム事業の大前提となる国の第5次フルプランが、いまだ明らかにされていないこと。
二つ目には、先日の本会議で、石原知事が答弁された将来の水道需要である「600万立米」という数字でさえ、昨日の委員会で明らかになったように、なお長期的な展望にたった検証が必要であること。
三つ目には、地下水や再生水など水資源自給率の向上、渇水対策・治水対策の戦略・戦術など、関係局を加え、総合的に検討することが必要であること。
四つ目として、石原知事が申されたように東京都としても、八ツ場ダムの事業費を独自に調査し、試算し直す必要があること。
五つ目に、他県の動向を見ても明らかなように、当該議案を必ずしも今議会で議決すべき必要性がないこと。などです。
これらを含めて都民にも情報を公開し、十分時間をかけて検討することが、合理的であり、将来に遺産は残しても、大きな負債や禍根は残さない賢明な選択であると考えるものであります。
以上の理由から、私たち都議会民主党は、当該議案は継続審査にすべきであると考えます。
(3)本会議
12月17日に最終日を迎え、都議会民主党は知事提案の議案、第244号議案「八ツ場ダムの建設に関する基本計画の変更に関する意見について」は、賛否を留保し、継続審査すべきたとの結論に至り本会議場から退席しました。しかし、自民・公明などの賛成多数で議案は採択されました。
都議会民主党が継続審査を求めた理由としては、(1)国土交通省が提示したダム建設費用が2,110億円から4,600億円となることについて詳細な調査検討が必要であること。(2)必ずしも今議会で議決すべき必然性がないこと。(3)フルプランにおける水需要予測が明らかでなく、代表質問の答弁で示された600万立米にも疑問があることです。
今後も他県の動向などに注意するとともに、地下水や再生水など水資源自給率の向上、渇水対策・治水対策などについて積極的に発言してまいります。