談話室

平成25年 3月 1日(金) 夢と感動のオリンピック

 代々木公園の原宿門を右手に進み、東京オリンピックの選手村宿舎として使われた建物の前に佇むと...。オリンピックにまつわる小さなエピソードを思い出します。前回の東京オリンピックから遡ること4年、北陸出身の方がお話してくださったローマオリンピック水泳日本代表のI選手のことです。
 当時、北陸の海辺の町から3人の水泳代表選手が同時に選出されました。自由形と平泳ぎの選手は共に銀メダルに輝き、町中が湧きかえったそうです。その中でバタフライのI選手は決勝まで進みましたが八位でした。しかし、I選手は、筋力をつけるため、古びた二つの粉ミルク缶にコンクリートを詰めて鉄製の心棒を通し、自作のバーベルとして使用し、練習していました。それでもI選手の紅潮した若々しい頬は、未来に向かって夢を膨らませていました。日本人の誰もが、貧しくも希望に満ちあふれた時代でした。近所の同級生の「兄ちゃん」であるI選手がとても眩しく見えたそうです。身近なところでオリンピックを感じ、1964年の第18回東京オリンピックに向かう同時代の空気に触れながら、多感で豊穣な少年期を過ごしたそうです。
 平成25年9月7日に、2020年のオリンピック開催地が決まります。時代は移り変わっても、今を生きる若者に掛けがえのない新たなエピソードが生まれることを期待したいと思います。

代々木公園の東京オリンピック時選手村宿舎