福祉大国スウェーデンの選挙と政治ルポ特集12

選択は経済から医療へ

 「保守ブロックの政権8年間で、たしかに我々タクシー業界は良くなった。古い規制は撤廃され、自由化の恩恵で売り上げも増えた」。こう語ってくれたのは乗り合わせたタクシー運転手のヨハンさん。しかし今回彼はこれまでずっと投票してきた穏健党(保守・右派)から社民党(左派)に支持を変えた。

 「仕事のことだけ考えるなら引き続き穏健党だ。しかし彼らは社会保障、特に医療をカットし過ぎた」と言うヨハンさん。彼には高齢の両親がいる。ところが、かつて手厚い看護体制をとっていたストックホルム市内の病院では、ナース一人で40人の患者を担当するという事態も起きているという。社会保障費予算のカットのツケがここに出ている。

 「経済も大切だが、それ以上に安心が大事さ。だから今回は政権が変わったほうがいいと思っている」。そう話してくれた彼の投票行動のとおりになった選挙結果であった。

ストックホルム市繁華街に設置されたスピーチコーナー。連日各党の党首、主要閣僚と野党の大臣候補が演説と対話を行う。

ストックホルム市繁華街に設置されたスピーチコーナー。連日各党の党首、主要閣僚と野党の大臣候補が演説と対話を行う。

看板は、ある終盤戦のゲストスピーカーを告知するタイムスケジュール

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